ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

今日はユナイテッド・シネマとしまえんにて、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観た。割引券で1700円。

ユナイテッド・シネマの割引券(1200円で鑑賞できる)をもらったので、よし使ったろうと。で時間を調べて行ったつもりが、うっかりその時間は「IMAX上映」で500円プラスですと。うそでしょ、SF大作映画ならともかく、60年代の映画を模したアナクロ趣味な映画を「IMAX」で観て、なんのメリットが。まあ仕方なく1200円プラス500円で観ましたよ。クエンティン・タランティーノ監督の話題作ですから。

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しかしなんだか狐につままれた、というか、タランティーノにつままれたような映画だった。あるいはブラッド・ピットがただカッコイイだけの映画と言ってもいいか。
1969年のハリウッド。ロマン・ポランスキー監督とシャロン・テートが出てきたら、最後は〇〇なことになる、と思ったでしょ、でもこっちの結末の方がよくない?って、あのシャクレた監督に問われれば、そりゃ断然こっちの方がいいとは思うけどさ。なんだかなぁと。

スティーヴ・マックィーン、ブルース・リー、ママス&パパスにジム・モリソンからセルジオ・コルブッチまで、1969年のハリウッド周辺(とマカロニ・ウエスタン)の記号を散りばめた、60年代末ハリウッド・グラフィティという感じか。あちこちに西部劇テイストが感じられるところは嫌いじゃないけどね。

たぶん、この映画を楽しむには、僕の知識と教養が足らんティーノなんだと思う。ひとつ分かるのは「IMAX」で観るメリットは無いということ。1200円で観たら「大傑作」と書いていたかもしれないのに!

荒野の誓い

昨日は新宿バルト9にて、『荒野の誓い』を観た。
夕方割引で1300円。

なかなか骨太な、そして過酷な西部劇だった。監督・脚本・製作はスコット・クーパー。

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1892年。法律上は政府とインディアンの戦い終結後のアメリカ。
かつてインディアン討伐で名を馳せた騎兵隊大尉(クリスチャン・ベール)は、拘留中だが病で余命短いシャイアン族の首長(ウェス・ステューディ)とその家族を、故郷のモンタナに返す護送役を命じられる。
旅の序盤には、いまだゲリラ的に白人を襲撃する残忍なコマンチ族に、家族を惨殺された未亡人も一行に加わる。

戦いの中で人間はどれだけ残忍になるのか。そして歴史が動き、人間はどこまで互いを理解し許せるのか、という贖罪の物語だ。
後半に交わす、ひとつの握手の場面の重さに、胸が熱くなる。

クリスチャン・ベールは、冷酷な軍人が、旅の中で少しづつ人間味を見せていく、複雑な心理の変化を巧みに演じる。
そしてウェス・ステューディ。彼はかつてウォルター・ヒル監督『ジェロニモ』(1993年)で、アパッチ族の戦士ジェロニモを演じた役者だが、年齢を重ね、シャイアン族の伝説的な首長にふさわしい、威厳と風格があった。

今回の旅の中でも、あまりにも多くの犠牲が伴い、あまりにも多くの命が失われたが、戦う意味合いは大きく変わっている。
ラストの列車のシーンは、歴史も、大尉自身も、次の時代に向かっていく象徴のように思えて、涙がにじむ。

しかし最近の西部劇って、やたら銃声が大きくて、急に「バンッ」ってきたら、客席でビクッとなって恥ずかしいんですけど。

まだ夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その9

さてこの企画、どうやら夏も終わりなので最終回です。そもそもオールマン・ベッツ・バンドの登場に興奮して始めたもので、全7回の予定だったんだけど、途中で「サザンがきゅう」という駄洒落を思いついてしまい、全9回に延長。ということで最後に登場は、ミシシッピ州出身のブルース・ロック・バンド、ノース・ミシシッピ・オールスターズ。

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サザンロックは、オールマン兄弟、ロビンソン兄弟、レーナード・スキナードのヴァンザント兄弟など、血の濃さが特徴的だが、ノース・ミシシッピ・オールスターズも、ルーサーとコーディのディッキンソン兄弟のバンド。ちなみに父親はミュージシャン/プロデューサーのジム・ディッキンソン。

兄貴のルーサー・ディッキンソン(ギター/ボーカル)は、1973年生まれ。とにかく才能あふれる男で、2000年に「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」としてデビュー後も、ロバート・ランドルフとゴスペル・ユニット「ザ・ワード」、ジョン・スペンサーとオルタナティブ・バンド「スペンサー・ディッキンソン」など複数のユニットを持ち、2008年頃からは、なんとブラック・クロウズの正式メンバーも兼任。
今年もフォーク系の「Luther Dickinson/Sisters of the Strawberry Moon」、カナダのブルース・ギタリストと「Colin Linden & Luther Dickinson Valentine」と、2枚のコラボアルバムを発表するなど、おそるべき尻軽男ぶり。

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North Mississippi Allstars「Player For Peace」(2017)

一昨年出た最新盤。このバンドはストレートにブルースをやるが、弟でドラマーのコーディ・ディッキンソンによるループやプログラミングも駆使したアレンジで、音像は先鋭的で新鮮に響く。
タイトル曲は、ミシシッピ州とノースカロライナ州で可決されたLGBTに対する差別的法案に反対するプロテスト・ソングだという。地元ミシシッピに誇りを持ちたいからこそ法案に反対する。政権批判すると「反日」とされる日本とは社会の構造が違うらしい。
コーディがリードボーカルを務める「Deep Ellum」は、リトル・フィート風の仕上がり。からのノイジーでワイルドな怒涛のブルース・ロック連打。かと思えばライ・クーダー調の「Bid You Goodnight」と、ディッキンソン兄弟の音楽愛と才気が溢れる一枚。

なんて書いてるそばから、ノース・ミシシッピ・オールスターズ、この秋にもう新作が出るじゃないかい。ルーサー・ディッキンソン的には、今年3枚目のアルバム!先行公開された曲とジャケットデザインを見る限り、傑作の予感しかないじゃないかい。

まだ夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その8

昨今のサザンロックを聴いてみようって企画で、やっぱりウォーレン・ヘインズ率いるガヴァメント・ミュールは外せない。

ウォーレン・ヘインズは1960年生まれ。まず1988年にディッキー・ベッツ・バンドに参加。そこでディッキーに気に入られたようで、翌年のオールマン・ブラザーズ・バンド再結成に迎え入れられる。
新生オールマン・ブラザーズ・バンドは、1990年代前半に何度か来日して、僕も中野サンプラザとか新宿厚生年金会館で見ているが、当時はディッキー・ベッツと「もう一人の若いヤツ」という認識だった。
しかしその後25年もウォーレンは、90年代にはディッキーと、2000年代はデレク・トラックスと、ツインギターでオールマン・ブラザーズ・バンドを引っ張り続けた。

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一方、1995年にはサイドプロジェクトとしてガヴァメント・ミュールを立ち上げ、スタジオ盤、ライブ盤を多数リリース。さらにはソロ・アルバムも数枚発表するエネルギッシュな活動ぶり。
いまやその体躯通りに、サザンロック界の重鎮といったところ。

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Gov’t Mule『Revolution Come…Revolution Go』(2017)

今年出たばかりの最新ライブ盤は買ってないので、ここではスタジオ制作の最新アルバムを。ジャケットデザインもとても良い。
重心の低いハードロックから始まる。ガヴァメント・ミュールはハードロック色が強いが、それだけではない。「The Man I Want To Be」や「Traveling Tune」あたりは、オールマン・ブラザーズ・バンドを思い出させる、というかぜひグレッグに歌ってもらいたい(いやウォーレンのボーカルも素晴らしいのだけど)佳曲。
一転して「Sarah, Surrender」は、マイケル・マクドナルドが歌いそうなソウルナンバー。「Burning Point」ではジミー・ヴォーンが参加。
ガヴァメント・ミュール、24年目。サザンロックの最前線です。
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グッド・ヴァイブレーションズ

昨日は渋谷HUMAXシネマにて、『グッド・ヴァイブレーションズ』を観た。サービスデーにき1200円。

1970年代、北アイルランドはベルファストの小さなレコード店主が、地元のパンク・バンドのレーベルを発足させて奮闘する話。
監督はリサ・バロス、グレン・レイバーン。

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2012年制作の映画だが、7年経って日本でも一般劇場公開になったとのこと。なんとも胸が熱くなる映画だった。僕はアイルランドの音楽事情も、パンクロックも何にも知らないから、これが実話ベースと知ってさらに驚きと感動が。

アイルランド紛争の最中、音楽好きだがそう若くもない男テリー・フーリーが、小さなレコード店「GOOD VIBRATIONS」を開業する。
開店前に地元の対立するグループをバーに呼び寄せ、LPレコードを配り「俺の店の前では暴れるな」と根回しする場面がある。レコード店が音楽を介して、思想や宗教を超えたコミュニケーションの場になることを目指したのかもしれない。

そしてある日、ライブハウスで地元のパンクバンドに興奮したテリーは、彼らをレコードを作る。やがて3つのバンドを抱え「ベルファスト・パンクのゴッドファーザー」と呼ばれるまでに。
テリーがパンクバンドに出会う前、「ベルファストとキングストン(ジャマイカ)は似てる。しかし彼らにはレゲエがある」なんて場面があった。社会情勢と人々の鬱憤を反映させた音楽を待望していた時、ベルファストにパンクロックが現れたってことなんだろう。

しかしこの男、家庭人としては失格。そのうえ商売っ気が無さ過ぎる。夢と理想を追い求めるあまり、多くのことが犠牲になる。もう少し上手くやろうよテリー、と思う。情熱だけで突っ走っちゃうタイプ。
でもそうじゃなきゃ出来ないこともあるわけで「グッド・ヴァイブレーションズはレコード屋じゃない、レーベルでもない、生き方なんだ」なんて言っちゃう熱さが、人を惹きつける。
テリーが幼少の頃からのヒーロー、アメリカのカントリー歌手ハンク・ウィリアムズが、守護神のように登場するのも好き。

ロケットマン

昨日は新宿バルト9にて、『ロケットマン』を観た。
夕方割引で1300円。

エルトン・ジョンの伝記ミュージカル映画。監督は『ボヘミアン・ラプソディ』をノンクレジットで最終的に仕上げたらしい、デクスター・フレッチャー。

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こりゃなかなかの傑作だ。ミュージカルにしたのが上手くいってる。
僕はちなみにエルトン・ジョンについては、70年代のベスト盤に入ってる曲ならほぼ知ってるかなぁ、くらいで、レコード、CDは一枚も持ってない、という初心者レベル。
だから作詞家バーニー・トーピンとの関係性など、初めて知った。

愛に飢えた家庭で育ったナイーブな少年が、音楽に目覚め、ロックに目覚め、成功して豪邸を手に入れパーティーざんまい。そうすると逆に孤独になりアルコールとドラッグに溺れて……と、音楽家の映画ではありふれた物語(実際にはそんなに何十本も観てるわけじゃないけれど)。
70年代においては、ゲイだということも屈折した一因なのだろう。
にしても、正直はいはいまたこのパターンね、と思ってしまう。

でもミュージカルだから、拗れて緊迫した場面で、その場の人物が歌い出すのが新鮮だ。当然エルトン・ジョンの曲だから美しいし、歌詞の意味を知ることも出来る。なによりエルトン・ジョンに扮したタロン・エガートンの歌が素晴らしい。
デクスター・フレッチャー監督によるイメージの洪水も、悪夢的な中にユーモアがあり、幻想的な効果を上げている。

ただし楽曲を発表順ではなく、バラバラに再構成しているので、その場面がいつ頃の出来事なのかがよく分からない、というのはある。
60年代から90年代くらいまでを描いているのだろうか。
そんな中、70年代初め、初めてのアメリカ進出で、ロサンゼルスの有名なライブハウス「トルバドール」で歌うシーンにワクワクした。
「トルバドール」とは、バーズ、イーグルス、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、トム・ウェイツなど、数々のアーティストがここで育ったともいえる伝説的な場所。映像で再現されて、ああこんな感じだったのかぁ、とウットリして、客席に誰か有名人が来てやしないかと探してしまったよ。

気になる映画

今気になってる映画。
まずは10月に日本公開も決まってる『イエスタデイ』。
ダニー・ボイル監督の新作だ。

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インド系イギリス人で、売れないミュージシャンの青年が「ビートルズが存在しなかった世界」に迷い込んで、ビートルズ・ナンバーを歌ってスターになっていく、という一種のパラレルワールドもの。


もう一本は『Blinded by the Light』。
こっちはまだ日本公開が決まってなさそう。タイトルはビートルズの「イエスタデイ」ほど有名ではないかもしれないが、ファンならすぐにピンとくるブルース・スプリングスティーン、ファーストアルバム収録の名曲「光で目もくらみ」だ。

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80年代のイギリス。幼少の時にパキスタンから移住してきた少年が、ある日、ブルース・スプリングスティーンの音楽を知り、勇気付けられ、人生が変わる、という話らしい。

ここで注目したいのは、2本の音楽青春映画の主人公が、インド系のイギリス人と、イギリス在住パキスタン人だということ。
なにかここに新しい潮流を感じませんか。

夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その7

サザンロックの総本山オールマン・ブラザーズ・バンドも、2017年にグレッグ・オールマンが亡くなり、50年近い歴史も幕を閉じるかに思えたが、ここへきて、なんとも胸が熱くなる後継バンドが現れた。
その名も「オールマン・ベッツ・バンド」ときた。おお。

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グレッグ・オールマンの息子、デヴォン・オールマン(右)と、ディッキー・ベッツの息子、デュアン・ベッツ(左)が、この数年活動を共にしていたのはYouTubeに上がってるライブ映像などで知っていたが、ついにアルバムデビューを果たしたのだ。
しかもベースはオールマン・ブラザーズ・バンドの初代ベーシスト、ベリー・オークリーの息子、ベリー・オークリーJr.だって。テレビのヒーローものの何十年かぶりの復活みたいな設定だけど、これぞ伝統芸能としてのサザンロック、正統的な後継者。

でも写真を見ても分かる通り、息子たちといっても既に中年である。デヴォン・オールマンは、1972年生まれの現在47歳。自身のバンドやソロ名義のアルバムをこれまで数枚リリースしてる。
他のメンバーも年齢的にはそんなものだろう。それぞれ地道に音楽活動を続けてきて、ここへきての集合だ。

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The Allman Betts Band『Down To The River』(2019)

良い。とにかく曲が良い。もう少し若かったら彼らも親世代に反発心があったかもしれない。偉大な親父たちと比較されるに決まってる。だけど、オールマン・ベッツ・バンドと名乗った時点で、ぜんぶ引き受ける気なんだろうと思う。私どもがサザンロックの本家本流です、という王道ナンバー全9曲。唯一のカバー曲がトム・ペティの「サザン・アクセンツ」ってのがまた泣ける。
野太くてスモーキーな声がデヴォン・オールマン。高めで甘い声がデュアン・ベッツ。とても分かりやすい歌い分け。特にデヴォンのボーカルが良い。親父のハスキーな声とは違うが、実に味わい深い歌。
サザンロックの伝統はこうして受け継がれる。
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夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その6

ブラック・クロウズと同郷のジョージア州アトランタから、ブラック・クロウズと入れ替わるように台頭してきたのがブラックベリー・スモークだ。僕はブラック・クロウズ派だから、今まで遠巻きに眺めてきたけれど、いよいよ聴いてみなくちゃならないなと。
YouTubeで数曲見たライブパフォーマンスは、もろブラック・クロウズのフォロワーって感じだったが。

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バンドについては何も知らないので、ネットで調べてみると2000年頃から活動し、2004年にデビューとあるから、もうキャリア15年以上。とするとメンバーは30代後半から40代ってところだろうか。髭面長髪だけど、形から入るパターンで、案外若いのかも知れないし。

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Blackberry Smoke『Find A Light』(2018)

買ってみたのはブラックベリー・スモーク6枚目となるアルバム。このバンドのジャケットデザインは、統一性こそ無いけど、どれもいい。
1曲目はレーナード・スキナード調のハードブギー。だけどアルバム通しての印象は、ブラック・クロウズというより、ジョージア・サテライツかな。ストレートに緩急をつけて、かつ変化球も覚えたサード・アルバムの頃のジョージア・サテライツ……を思い出す、バラエティに富んだ充実作。

リードボーカルのCharlie Starr(チャーリー・スター)という男。名前もなんだか凄いけど、ほぼ全曲の作曲と、ペダルスティール・ギターからマンドリンまでこなす才人だ。サザンロックの層は厚い。
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夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その5.5

サザンロックの話題が、昨日のヤフーニュースに載っていたので触れておくと、「デュアン・オールマンのレイラ・ギター、1億円で落札」というハナシ。
デュアンが愛用して「デレク・アンド・ドミノス」でも使用したギターが、地元ジョージア州メイコンで開催されたオークションに出品されて125万ドル(約1億3300万円)で落札された、と。
まあ、こういうのは欲しい人が値段を決めるだけだから、ギターそのものの価値とか、音楽の価値とは関係ないから「ふーん」と思うだけなんだけど。

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記事にはデュアン・オールマンの紹介として「米音楽誌「ローリング・ストーン」による2003年の「歴史上最も偉大な100人のギタリストでは、ジミ・ヘンドリックスに次ぐ第2位に選出された」とも。
これまた誰がどういう基準で選んでるのか分からないから「へぇー」としか思わないんだけど。
ジミ・ヘンドリックスの1位に異論はない、むしろジミヘンが1位じゃないランキングは信用できない、ってくらいの存在だからデュアンの2位は誇らしい。でもオールマン・ブラザーズ・バンドは、スーパーギタリストとバックバンドではなくて、あくまでバンドが一丸となって作り出す独特の音空間が魅力だから。

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Boz Scaggs『Boz Scaggs』(1969)

それでは1969年、若きボズ・スキャッグスが、アラバマ州のマッスル・ショールズ・スタジオに出向き、そこでスタジオのハウス・ギタリストだったデュアン・オールマンと出会った名盤を聴いてみよう。
デュアンはきっと、自分の弾いてるギターが後に(50年後)125万ドルになるとは知らずに弾いている。ボズ25歳、デュアン23歳、若者のブルース。
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夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その5

ブラック・クロウズ、ロビンソン兄弟の弟、リッチ・ロビンソンは、若い頃は甘いマスクで(今だって多少、恰幅がよくなったとはいえ)人気だったが、性格的に控えめなのか、あんまりロックスターとか、ギターヒーロー的なポジションには興味なさげだった。
しかしミュージシャンとしては休むことを知らず、ブラック・クロウズ活動休止直後からソロ・アルバムをコンスタントに制作。

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さらに2017年にはマーク・フォードら、元ブラック・クロウズのメンバーを含む新バンドThe Magpie Salute(ザ・マグパイ・サルート)を
立ち上げ、まずライブ・アルバムをリリース。
そうしてスタジオ制作としてのデビュー盤がこれだ。

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The Magpie Salute『High Water 1』(2018)

いきなり聴こえてくるのはゴリッゴリのギターのリフ。ブラック・クロウズ時代のエッジをさらに尖らせたようなロックナンバーだ。
2曲目以後は、ブルース、カントリー、フォークなどの要素が滲み出す豊穣なアメリカン・ロック。ブラック・クロウズの音楽性の継承は、リッチ・ロビンソン率いるマグパイ・サルートの方だと言っていい。
リッチを始め経験豊富なアラフィフのミュージシャンが曲を持ち寄っただけあり、バラエティに富み、かつ濃密な楽曲が並ぶ。

一つ気になるのは、リードボーカルとして招いた新加入のジョン・ホッグだ。ハスキーで力強いボーカルは良いんだけど、クリス・ロビンソンと同系統なので、どうしたって「仮想クリス・ロビンソン」に聴こえてしまう。ライブではブラック・クロウズのナンバーも演るそうだからなおさらだろう。
曲ごとのクレジットはないが、たぶんリッチも半分くらい歌っているはず。確かに特徴のない声ではあるけど、リッチも頑張って歌って、ダブルボーカル的なスタイルになればいいと思うな。
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凪のお暇

今シーズン見てるドラマは金曜夜、TBSの『凪のお暇』だけかな。
空気を読んで生きることに疲れた28歳OLが、会社もSNSもやめて、郊外の安アパートに引っ込んで、天然パーマも隠さないことにして、人生一回休み、リセットしようとする話。

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凪を演じる黒木華がね。やっぱりいいよね。モジャモジャ頭でも可愛い。ジーンズにTシャツでママチャリ飛ばしても可愛い。彼女だからこそ、郊外ボロアパートのシンプルな暮らしが魅力的に思える。
元カレ(高橋一生)とアパートの隣人(中村倫也)も、一筋縄じゃ行かないっていうか、一長一短というか、どうなることやらと。
後半戦も楽しみにしております。


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それで今日は、エリカ・バドゥで「アイ・ウォント・ユー」を聴きながらお別れです。
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夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その4

70年代ロックの匂いをプンプンさせて、ジョージア州アトランタ出身のブラック・クロウズがデビューしたのは1990年。オールマン・ブラザーズ・バンドのチャック・リーヴェルがゲスト参加していたのも話題になったが、当初はどちらかというとフェイセズやハンブルパイあたりのブリティッシュ・ロックの影響を強く感じた。
ところが2ndアルバム『サザン・ハーモニー』で、南部魂を前面に。黒人女性コーラスを入れてゴスペル風味を加わえ、リズムは奥行きと粘りが増し、サザンロックの継承者に。

ブラック・クロウズは、クリスとリッチのロビンソン兄弟を始め、ビジュアル的にもスター性抜群だったが、音楽のクオリティを追求するにつれて「シブい」バンドになってしまい、紆余曲折で2010年まで活動したが、僕に言わせりゃぜんぜん過小評価に終わったと思ってる。

そしてクリス・ロビンソン(兄の方)は現在、クリス・ロビンソン・ブラザーフッド(CRB)を率いて活動中。ソロのアーティスト/ギタリストとしても知られるニール・カサールもメンバーだ。すっかりむさ苦しくなって、写真を見ても誰が誰?状態だけども。

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そんなCRB、リリースペースが案外早い上に、CDショップに入荷しなかったりで、全然追いついてなく、久しぶりに買ってみた。

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CRB『Servants Of The Sun』(2019)

プログレっぽいジャケットだが、聴こえてくるのはキーボードが特徴的で、むしろ70年代のフュージョンみたいな爽やかなサウンド。あれっ、最近はこんな感じなの?と思ったら、クリスのボーカルが聴こえてくると、変わらぬ歌声に妙な安心感を。
ライブでのレパートリーを意識したという、ポップで小気味いいロックナンバーが並び、クリス・ロビンソン52歳、まだまだポジティブなエネルギーを感じます。

失われたミカドの秘紋

加治将一『失われたミカドの秘紋 エルサレムからヤマトへ「漢字」がすべてを語り出す!』(祥伝社文庫)を読んだ。
定価840円+税。

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この数年、古代日本への「ユダヤ人渡来説」に興味を持って、いろんな本を読んでるんだけど、この小説もまたそのひとつ。

おそらく著者の分身である歴史作家を主人公にして、歴史ミステリー小説仕立てで、「漢字」の成り立ちとルーツを探る。
漢民族とは何者だったのか、古代中国に伝わった景教(古代キリスト教ネストリウス派)が漢民族に与えた影響と、漢字の成り立ちにみる聖書の影響を探り、やがて倭(ヤマト)に渡ってくるという、壮大なスケールの「仮説」を追う歴史ロマン。

これまで僕は、神道や古事記・日本書紀と旧約聖書(ユダヤ教)の共通点や、古代ユダヤと日本の文化・風習の類似点などを読んできたが、今作は「漢字」という切り口で、興味深く読んだ。
漢字の成り立ちというと「人」という字は支え合って、的な内容を想像しがちだが、もっともっと深く、500ページ超のボリュームで積み重ねていく説得力は、グイグイとページを捲らせる力がある。

しかし「仮説」に関しては大いに納得できる一方で、歴史ミステリーとしては破綻している。前半思わせぶりに出てきた謎の組織もまったく回収されず、冒頭の友人の死の謎さえも放置。結論めいた部分では、急に出てきた研究者の説を借りて来るとは御都合主義すぎ。
歴史ミステリーの形式にする必要があったのだろうかと。
まあでも十分面白く、古代の日本とアジア、中央アジアの関係がますます興味深いものになったのは間違いない。


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それでは今日は、シルクロードを移動する古代の民族を想い、サンタナの「果てしなき道」を聴きながらお別れです。

夏の日の本谷有希子『本当の旅』

昨日は原宿・VACANTにて、夏の日の本谷有希子『本当の旅』を観劇。
本谷有希子さん、3年ぶりの作・演出による舞台。

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会場に入ると、中央に一段高い舞台があり、舞台を挟んで左右に座席が並んでいた。舞台上ではたぶん役者さんが動き回って、雑談風に観客と会話しながら、携帯電話オフとか冷房の設定確認をしている。かと思えば、本谷さんが普通に歩いててちょっとドキドキする。
通常の演劇とは随分違うようだ。

3年ぶりの本谷有希子の世界にゾクゾクする。公演はまだまだ先も続くから、あんまり踏み込んだことは書けないけれど、ああ本谷さんの世界だなぁと。以前の「劇団、本谷有希子」とはやり方が違っても、突き刺さってくる言葉が……痛いところをチクチク突いてくる言葉の、ある種の快感は、やっぱり本谷さんの世界だなぁと。

3人の主要人物を、複数の役者がスライド式に入れ替わって演じていく(しかも役者の容姿は似ていない)手法に前半は戸惑ってしまう。
今回は数度のワークショップの中で作り上げたとのことで、役者を固定しなかったのかもしれないが、それが不思議な効果を出していた。

SNS依存。海外旅行に行っても自分の目ではなく、スマホのカメラ越しにしか見ない人たち。ガイドブックで見た風景に自分を嵌め込むことに必死な人たち。嫌なものが写り込んだら編集で消してしまう人たち。本当は対して面白くもなかった旅行が、後からスマホの写真を見返すと、面白かったかのように思えてくる。そんな人たちが主人公だが、決して若者ではなく、実はアラフォーだったという痛さもあり。
そういう連中に対する「皮肉」と「共感」を描きながら、後半は意外な展開に……。

ああ怖い怖い。

夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その3

サザンロック界の若手最注目株は、サウスカロライナ州出身、まだ23歳のマーカス・キング率いるマーカス・キング・バンドだ。そんな評判を聞いてYouTubeで検索してみたところ、まずビジュアルのインパクトがすごい。・・・デブ。顔もなんというか音楽オタク感が滲み出てる。
しかしデブでオタク風でも(失礼だなさっきから)カリスマ性抜群で、新世代スター登場という雰囲気がビンビンに出てる。

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マーカス21歳の時に作った自主制作アルバムが、オールマン・ブラザーズ・バンドのウォーレン・ヘインズの耳に止まり、ウォーレンのプロデュースでセカンド・アルバムを発表。オールマンの同僚デレク・トラックスもゲストで参加したとのこと。

そんなマーカス・キング・バンドの最新サード・アルバムがこれ。ジャケットからして名盤の匂いがするので、初めて購入してみた。

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The Marcus King Band『Carolina Confessions』(2018)

まず圧倒されるのは男版ジャニス・ジョプリンみたいな、マーカス・キングのカッスカスの声。ミディアム・テンポの曲調にホーンセクションが入ると、70年代のアトランティック・サウンド、サザン・ソウルを彷彿とさせる。
若き天才ギタリストという触れ込みだが、決して力技でグイグイ押すタイプではないんだな。むしろソウルフルなボーカリストとしての魅力を強く感じる。

デブでオタクだけど(いやオタクってのは、見た目からの想像だけど、でも音楽一家だったらしいマーカスんちには、たぶん生まれた時からブルースやソウルのレコードがごっそりあって、知識も半端ないはず)、作曲能力、ギタリストの腕前、ソウルフルなシンガーとしての才能と、全て揃った(ビジュアル以外?)天才現る。

夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その2

現在のサザンロックのトップランナーは、テデスキ・トラックス・バンドだろう。バンドの中心人物でリード・ギタリストのデレク・トラックスは、オールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー、ブッチ・トラックスの甥っ子にあたる。「デレク」という名前はもちろん「デレク・アンド・ザ・ドミノス」(エリック・クラプトンのバンドだが、デュアン・オールマンが全面的に参加)から取っている。
10代からデレク・トラックス・バンドとして活動し、1999年には、弱冠20歳でオールマン・ブラザーズ・バンドの正式メンバーも兼任。
2010年、妻スーザン・テデスキのバンドと合体して再編成、現在のやたらと大所帯のテデスキ・トラックス・バンドに至る。

僕はデレク・トラックス・バンド時代の来日公演は行ったことがあり、アルバムも4枚くらい買って聴いていたけれど、なぜかテデスキ・トラックス・バンドは聴いてなくて、初めて買ってみた。

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Tedeschi Trucks Band『Signs』(2019)

なるほどコーラス隊、ホーンセクション、ストリングスがレギュラーで入ってるからこの大所帯なのか。これじゃツアーは数十人規模での大移動になりそうだけど、予算は大丈夫なんだろうか、と余計な心配を。
スーザン・テデスキのリード・ボーカルは、ハスキーだけども女性だから、幾分涼しげで心地よい。
そしてゴスペル風のコーラス隊は南部フィーリングたっぷりだ。

ラスト。アコースティックによるシンプルな「The Ending」は、グレッグ・オールマン(2017年没)、セデル・デイヴィス(2017年没)、レオン・ラッセル(2016年没)、B.B.キング(2015年没)、そして叔父であるブッチ・トラックス(2017年没)ら、偉大なる先達に捧げられている。

夏だ!サザンだ!サザンロック祭り/その1

暑い日に熱いお茶を飲むように、暑い日にこそ熱いサザンロックを聴いてみてはどうか。サザンロック。そう、アメリカ南部の、むさくるしい男たちが大所帯で暑苦しいロックを延々と聴かせるあれだ。
こないだフと気付いたのだが、なんだかんだ言って(誰も何にも言ってないけれど)、今、まあこの2、3年だ、サザンロックって意外と活況を呈しているんじゃないかと思ったのだ。そんなわけで、昨今のサザンロックを聴いてみようという企画です。
今んとこ不定期で全7回くらいの予定。

さて「昨今のサザンロック」と言ったそばから、いきなり1968年のアルバムを持って来るのは我ながら如何なものか。でもやっぱり原点回帰って大事だから。それにこれは、ついこないだ世界初オフィシャルCD化されたばかりの「新作」なのだ。

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Duane & Gregg Allman『Duane & Gregg Allman』(1968)

サザンロックの総本山、オールマン・ブラザーズ・バンド結成前夜の貴重な音源だ。デュアンとグレッグのオールマン兄弟は、10代の頃からオールマン・ジョイズ、アワーグラスと2度デビューしているが、いずれも思うように行かず、一旦故郷に戻って仕切り直し。
そして地元フロリダで、ブッチ・トラックス(後のオールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー)の在籍するバンドに、オールマン兄弟が参加する形でレコーディングされたのが本盤。正にサザンロックの原点。
デュアン21歳。グレッグ20歳の秋である。

さすがにオールマン・ブラザーズ・バンドの重厚感はまだないものの、南部の悠々たる空気を感じる小気味い良いブルース・ロック。スタジオミュージシャンとして修行していたデュアンのギターのせいか、スワンプ・ロックの趣もある。
そして何より弱冠20歳、グレッグのボーカルが上手過ぎる。ハスキーでソウルフルなあのボーカルが既に完成されているから驚いた。
1972年の名盤『Eat a Peach』に収録される名曲「Melissa」の初演バージョンもたまらない。
サザンロックの資料的価値以上に、聴きどころ満載のアルバムだ。

この1年後にオールマン・ブラザーズ・バンドはデビューする。

アメリカと戦いながら日本映画を観た

小林信彦『アメリカと戦いながら日本映画を観た』(朝日文庫)を読んだ。新刊680円+税。

この本は、20年くらい前に出ていた『一少年の観た〈聖戦〉』(ちくま文庫)の改題・加筆修正による復刊とのこと。

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これはなかなか立ち位置の難しい本だ。小林信彦は昭和7年、東京日本橋区生まれ。生まれた時から既に日本は戦争の中にいて、9歳で太平洋戦争開戦。中学一年生で終戦を迎える。
小林少年は、幼い頃から映画や舞台を多く観ていた。この本は戦時下に観た映画について書いておこうというものだ。
当時は〈映画法〉がある以上「ぼくたちにあたえられるのは、すべてが〈国策映画〉と考えてよい」とあるように、国策映画を観て育った少年のドキュメントとなる。

当時はクレジット・タイトルの前に必ず「撃ちてし止まむ」という文字が重々しく出たというから恐ろしい。
『マレー戦記』『空の神兵』『ハワイ・マレー沖海戦』「望楼の決死隊』『進め独立旗』など国策戦争映画ばかりでなく、黒澤明の『姿三四郎』や稲垣浩の『無法松の一生』なども当時観ている。
小林信彦は可能な限りビデオで見返して、当時の小林少年の感想に加えて、大人としての評論も付け足している。

そうして終戦。小林少年は映画やラジオや新聞を通して、日本は「正義」だ「聖戦」だと信じて疑わなかったものが崩れていく。

とにかく貴重なのは、年齢的にも当時を知る人が少なくなってきたこと。そして沢山の映画を観ることができる環境にいたこと。記憶力がいいこと。それを文章に書くことができること。
そう考えると、これはもう小林信彦しか書けない本だろう。


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それでは今日は、ウィルコの「ウォー・オン・ウォー」を聴きながらお別れです。

さらば愛しきアウトロー

先週に続き、日曜夜は日比谷・TOHOシネマズ シャンテにて『さらば愛しきアウトロー』を観た。
戦慄の一般料金1900円。せ、せ、せん、きゅ、きゅうひゃく、せんきゅうひゃくえんだとぉ!さらば愛しき1900円。

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ただもうウットリと、デヴィッド・ロウリー監督(まだ30代だって)の柔らかな演出に酔いしれた93分だった。もちろんロバート・レッドフォードの立ち姿の変わらぬ美しさに惚れ惚れし、シシー・スペイセクの素敵な年の重ね方に惚れ惚れした。そして黄昏ギャングの仲間、ダニー・グローヴァーとトム・ウェイツの好好爺っぷりもたまらない。

老犯罪者と追いかける刑事がダイナーで交差する場面は、クリント・イーストウッドの『運び屋』を思い出す。主演俳優の顔に、その俳優の過去の数々の作品が重なって見える、という点でも共通してる。
しかし『運び屋』が今の映画だったのに対し、『さらば愛しきアウトロー』は時代が80年代初めということもあり、70年代調の質感でノスタルジックな、ある意味ファンタジーのような映画になっている。

『運び屋』ついでに比べてみると、こちらの追う側、刑事ケイシー・アフレックの立ち位置が、なんだか曖昧なのが気になった。彼の生活と家族を描いてキャラクターを膨らませてはいるが、彼って結局何なん?という疑問は残る。

あと、レッドフォードとシシー・スペイセクが映画館で映画を観るシーン。あっ!ウォーレン・オーツだ!と思って、帰ってから調べて見たら引用されてた映画は『断絶』(1971)だそうだ。
そこはウォーレン・オーツだったら『デリンジャー』(1973)を観るべきじゃない?それは「いかにも」過ぎるかな?
リチャード・ファーンズワースの西部劇『グレイフォックス』で、紳士強盗と呼ばれたビル・マイナーが、映画館で『大列車強盗』を観て血が騒いだように。それだと「いかにも」過ぎるかな?